岡本綺堂「影を踏まれた女」(光文社文庫新装版)を読む。
岡本綺堂といえば、大江戸シャーロックホームズともいうべき半七捕物帳が有名だが、
新歌舞伎の脚本や、怪談奇談の語り手としても名高い小説家であり劇作家。
この怪談コレクションも、元士族であり当時の知識階級であった綺堂らしく情緒あふれる文章でとても読みやすい。
15編が収録されているが、読み進めていくうちに、 いつの間にか江戸や明治の時代に迷い込んだような錯覚に陥る。
一つひとつ、不思議な話、妖しい話、恐怖譚など趣向を凝らした物語が、百物語形式で進んでいく。
中国や欧米の怪談にも精通している綺堂ならではの、 独特な語り口についつい書を置くタイミングを逸し、
もう一話、もう一話と進んでいくうちに、 いつしか明け方に・・・。
次の日も仕事だったことに、今更ながら恐怖を覚える。
この本の中でのおススメは「猿の眼」。
挿画もなく活字だけなのに、目の前に情景がありありと浮かんでくる。
2020年10月30日 19:45