追悼 立花隆さん【社長ブログ更新しました】
なぜその本を選んだのか、今となってはまったく覚えていないが、おそらくは、ただ単に「なんか興味深いなあ」くらいの感覚だったのだと思う。
しかし、その1冊の本との出会いがきっかけとなり、私の中の知的好奇心が大いに刺激され、ほどなく愛読者となった。
現在に至るまで立花さんの著書で手に入れられるものは、ほぼすべて購入している。
特に面白く読んだのは「宇宙からの帰還」「臨死体験（上・下）」「青春漂流」「文明の逆説」「ぼくはこんな本を読んできた」「知のソフトウェア」「サル学の現在」など。
10～20代の頃の私は、立花さんの新刊が出るたびに面白くて何度も徹夜で読書した（翌日はポンコツのまま職場に向かっていたような・・）。
何十年間も週刊文春で「私の読書日記」を連載されていたが、最近は載っていないなあと思っていたら、まさかの訃報。
もっといろんなテーマについて書いてほしかったのに残念。
立花さんは知的好奇心が人並外れて強い人で、こんなにも多くの書物を読んでいる人は古今東西居ないのではないかと思えるほどの方だったらしい。
さまざまなジャンルやパラダイムを、いとも簡単に飛び越えてしまう稀有な存在。博覧強記の塊（かたまり）。
ここまで知的欲求に純粋な人もそうそういないのではないか。
そして、難しい内容を分かりやすく伝える筆力は当代随一だったと思う。難しいことをもったいぶって難しく書く作家は大勢いるが、その点も凡百の作家とは明らかに一線を画していた。
難しい内容を分かりやすく伝えてくれる文章は、私のような一般の読者には、とても親切であり、物事を本当に理解していないと、難しいことを分かりやすく説明することは決してできない。
立花さんの新刊が発売されるたびに同じものを2冊購入し、1冊は読書用として読み倒し、もう1冊は保存用として書棚に飾っていた。
単行本が文庫本になったときは、その文庫本も購入していた。書いてある内容は同じだが、文庫本には“文庫本あとがき”が追加されている、たったそれだけの理由で購入していたのだが、いつしか自宅の書棚には「立花隆コーナー」が出来上がっていた。
自分でもまったくもって酔狂だなあと思うが、面白いのだからしょうがないよね、としか言いようがない。
保管場所の理由もあり、35歳の時に、実家の書棚にある本や雑誌を約2,000冊処分し、昨年から今年にかけて、断捨離と称してさらに2,000冊の書籍を処分した。
しかし、立花さんの書籍は捨てずに保管してある。若い頃に読んだ本を30年後の今になって読み返しても非常に面白い。
現在の自宅書斎も決して広いとは言えず、書棚もすでにキャパシティを超え溢れかえってしまっているが、当面はこのままにしておこうと思っている。
書斎で本に囲まれて過ごす時間を大事にしているのも、立花さんとはスケールは比べ物にならないものの、ちょととだけ似ているのかもしれない。
立花さんのおかげで知的好奇心がどれだけ刺激されたことか。もうこんなジャーナリストは現れない、そう考えると同時代を生きることができて幸せな気にさせてくれた人でもあった。
若い頃は、乏しい財布のお小遣いの大部分が書籍代に消えていった。しかし、それが今の自分の精神的な血肉となっているのだから、「立花さん、責任を取ってくれよ」とは言えない（笑）
立花さんの著書の中で、「読書は精神的な食事だ」と書いてある部分が印象に残っているが、これは私にとってまさしく正鵠を射ているし、これからも続けていくのだろうと思っている。
時代はネット社会になり、書物であろうがネットであろうが、知的情報共有の手段がどれだけ変わろうと、根本においては学ばんとする強い意志こそが大事であり、その意志を持つものはなんでも学ぶことができるということを教えてくれた人だった。
写真は立花さんの小石川の事務所で、通称「猫ビル」。
5年ほど前、文京区にある宝生能楽堂まで能を見に行ったとき、ぶらぶらと散歩がてらに見てきました。
知の巨人よ、安らかに。
2021.6.27
2021年06月27日 13:41
