プリデスティネーション(映画)
このジャンルで、「なんだかすごいもの」を観たさに、いろいろ探して借りてきた1本が、
「プリデスティネーション」(2014年・オーストラリア・SF映画)。
物語の舞台は1970年のニューヨーク。とあるバーに、ジョンという一人の青年がやってきた。
ハンサムだがどこか闇を抱えたようなその青年に、バーテンダー(イーサン・ホーク)は、彼の過去の話を聞くことになる。
ジョンは話し始めた。
「おれがまだ少女だった頃・・」
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中学生の頃に何度も読み返した藤子・F・不二雄先生のSF短編集(全3巻)も傑作ぞろいであった。
ちなみに、F先生のSFはS(少し)F(不思議な)の意味らしい。
タイムパラドックスはSFの大きなテーマのひとつで、現在のタイムトラベルSF作品ではこのパラドックス(矛盾)を扱ったものが中心になっている。
有名なのは「親殺しのパラドックス」だ。タイムトラベルで過去に戻り自分の親を殺したら、自分は生まれないのだから親が殺されるという事象も発生しない。だがその場合は、自分はこの世に生まれて、親は(自分の子供に)殺される。しかし殺されると自分は生まれず親は殺されない・・・。
このように無限のループ(循環)に陥ってしまう。パラレルワールドや過去不可変など、さまざまな回答が試みられてはいるものの、そもそも私たちはタイムトラベルができないのだから、どうにも確かめようがない。
さて、本作品の原作はロバート・A・ハインラインの「輪廻の蛇」(ハヤカワ文庫・原題:All You Zombies)。
ハインラインが一日で書き上げたという30ページ程度の短編を映画化するにあたって、新たに連続爆弾魔“フィズル・ボマー”というキャラクターを追加。
「プリデスティネーション』は、「輪廻の蛇」をかなり忠実に、しかも30ページを一時間半の映画に仕立て上げた傑作だ。
タイムパラドックスの難解さゆえに理解が難しいので、このプリデスティネーションの衝撃は2度目の鑑賞のときに、すべてが繋がってより面白く観ることができる(たぶん)。
繰り返しになるが、本当によく練られたストーリーで、時間が経ったあとに再度観返すのもまた面白い(例えば、ジャンルは異なるが孤島の精神病院を舞台にした作品「シャッター・アイランド」など)。
今回は星5つ★★★★★
ちなみに、10年ほど前、同じハヤカワ文庫でハインラインの「夏への扉」という傑作SFを読んだが、
こちらもおすすめの1冊です。
2021年04月26日 11:38