稲垣栄洋著「雑草という戦略」（日本実業出版社：2020年）を読む。
しぶとく生えてくる雑草。
雑草が得意としている特殊な環境は、予測不可能な激しい変化が起こる場所である。
普段、私たちが目にしている雑草は、ただ何となく生えているわけではなく、
道端や公園や畑など、よく見ると植物が生える場所としては特殊であることに気づく。
草刈りにあったり、踏まれたり、抜かれたりする可能性も高く、
そのなかで雑草と呼ばれる植物は、そんな過酷な環境を「自ら選んで」生きている。
その理由は非常に合理的であり、面白く、深く考えさせられる。
雑草は踏まれても立ち上がるという無駄なことはしない。
いかにして種子を残すかに全力を尽くすのみである。
それが逆境を生きる雑草の戦略なのである。
これこそが本当の「雑草魂」である。
頭がいいと威張っている人でも、逆境の時代だと、あわてて立ち上がろうとばかりする。
予測不能な変化だと、動転して大切なことを見失ってしまう。
しかし、雑草を見てほしい。
逆境の時代であるとすれば、予測不能な変化の時代であるとすれば、今「変えてはいけないもの」とは何だろうか。
雑草は、そう問いかけているような気がする。
悠久の時の中で、地球の環境は大きく変貌を遂げてきた。
そして植物はその変貌を乗り越えてきたのである。
そこには壮大なドラマがあり、そのドラマの末に、道端の小さな雑草があるのだ。
そう、雑草は、最も進化した植物なのであり、
そして、雑草の生き方とは、最も進化した生き方なのである。
現在はVUCA(ブーカ)の時代と言われている。
Volatility（変動性）、Uncertainty（不確実性）、Complexity（複雑性）、Ambiguity（曖昧性）の頭文字を並べた言葉であり、もともとは軍事用語だったが、現在ではビジネス用語としても用いられている。
繰り返しになるが、雑草が得意としている特殊な環境は「予測不能な激しい変化が起こる場所」であり、
もし、私たちが生きている現代が、VUCAのように予測不能な変化の時代なのだとしたら、
特殊な環境に適応して、特殊な進化を遂げた、特殊な植物である「雑草」の戦略が、
ビジネスにおいても十分に活用可能になる。
単なるトリビアとして読むか、それとも雑草の戦略をビジネスにも生かしていくには、
と自らのビジネスに当てはめながら読むのとでは、書籍の内容が全く異なってくる。
この書籍を読んでからというもの、道端に生えている雑草を見かけると、
以前とはちょっと違った別の生き物のように思えてくるようになった。
2020年11月18日 00:00
