しゃちょの読書日記【ブログ更新しました】
1. 『近江商人の哲学 「たねや」に学ぶ商いの基本』山本昌仁 著 講談社新書「お客様のことを考えろ!数字はあとからついてくる」という一言が、この本の本質を象徴している。
私はこれまで、事業において「三方よし」の精神を意識してきたつもりだ。
ご利用者様にご満足してもらうだけでなく、地域社会に貢献し、スタッフもやりがいを感じられるような運営を出来るだけ心がけてきた。
しかし、この本を読んで思ったのは、「もっとできることがあるのではないか」ということだ。
この本で語られる「たねや」の取り組みには、ただの理想論ではなく、具体的な行動の積み重ねがある。
たとえば「ラ コリーナ近江八幡」の成功は、徹底的にお客様目線に立ちながらも、地域全体を盛り上げるという大きなビジョンを持って実現している。
この「地域の魅力を自ら育てていく」という視点は、まさに自分の事業にも通じるヒントだと感じた。
印象に残ったのは、たねやが「売ること」だけに注力せず、「お客様に感動を提供する」ことを第一に考えている点だ。
例えば、施設の設計や自然素材へのこだわり、訪れた人がその空間全体で得られる特別な体験——これらが年間300万人の来訪者を引きつける理由だ。
私は、現在の事業においても、ご利用者様にとって「ひよりに来ると元気になれる」「ここに来ると安心できる」と思ってもらえる施設づくりを目指しているが、「感動を提供する」という次元にはもう一工夫が必要だと気づかされた。
また、「たねや」が大切にしているのは、短期的な利益ではなく、地域やお客様との信頼を積み重ねていく長期的な視点だ。
これは私自身も心がけてきたことだが、改めて自分の取り組みを振り返る機会となった。
この本を読んで、「自分はすでに実践している」と思う部分が多かったことは正直嬉しかった。
しかし、その一方で、「本当にご利用者様や地域の期待を超えるような事業ができているか」という問いが胸に刺さった。
たねやが目指す「次のステージ」の商いに触れることで、私もさらに高み(次のステージ)を目指したいという意欲が湧いてきた。
この本は、単なる成功哲学ではなく、行動と結果で裏打ちされた説得力がある。
そして、たねやの取り組みが示す「商いの本質」は、これから事業を進める上での指針となるに違いない。
「三方よし」をどう現代的にアップデートするかを考える上で、非常に示唆に富む一冊だ。ビジネスにおける新たな気づきを得たい人にも、ぜひ読んでほしい。
2. 『一向一揆共和国 まほろばの闇』五木寛之 著 ちくま文庫
一向一揆。この言葉を聞くと、石川県民としてはすぐに「百姓の持ちたる国」というフレーズが浮かぶ。
この地に生まれ育った者なら、一度は耳にしたことがあるはずだ。
だが、この本を読んで驚かされた。一向一揆がただの農民反乱でも、宗教戦争でもなく、「理想の共和国」を目指した壮大な挑戦だったと知り、認識が根底から覆された。
五木寛之氏は、この本で一向一揆を単なる歴史の一事件として扱うのではなく、人々が共に生きるために何を選び、何を失ったのか、その深い人間ドラマを描き切っている。
自治を求めた民衆の努力と希望、そして内部で起きた葛藤や闘争が、鮮やかに浮かび上がる。
読むほどに、「百姓の持ちたる国」とは、決して単純な理想郷ではなかったのだと気づかされる。
私自身、石川県民として一向一揆について調べたことがある。
たとえば越前あわら市の吉崎御坊に足を運び、蓮如が一向宗を広めた地を訪れたこともあるし、金沢市に残る一向宗ゆかりの地を歩いたこともある。
そんな私にとって、この本はただの歴史書ではなかった。
むしろ、一向一揆を新しい視点で捉え直す「学び」となった。
五木氏が描く一向一揆は、「百姓と僧侶と武士が団結して封建制度に立ち向かった勇者たちの物語」だ。
しかし、それだけではない。一揆内部での権力争い、個々の信念がぶつかり合う緊張感、そして挫折と敗北。
そこに描かれているのは、私たちと同じように葛藤しながら生きた人間たちの姿だった。
この本の真価は、単なる過去の物語ではなく、現代にも通じる普遍的なテーマを問いかけている点にある。
「共存とは何か」「理想を追い求めるには何を犠牲にする覚悟が必要か」。一向一揆の物語を通じて、五木氏は私たちに挑戦状を突きつけているように感じた。
石川県に住む者だからこそ、この本の重みをより深く感じられるのではないかと思う。
一向一揆は、この地の誇りである。
しかしその背景には、多くの血と涙が流れ、理想と現実の間で揺れ動いた人々の姿があった。
それを知ることで、加賀の地への愛着がさらに増す。
五木寛之氏が紡ぐ壮大な物語は、歴史を超えて現代に語りかけてくる。
一向一揆に少しでも興味がある石川県民にはぜひ読んでほしい。
そして、「共に生きる」とはどういうことか、一向一揆の歴史から学び直してほしい。
読む前と後では、きっと一向一揆への理解がまったく違うものになるだろう。
3. 『天狗争乱』吉村昭 著 新潮文庫
「信念を持ち、信義を貫いて生きる」——この言葉が、天狗党のリーダーである武田”伊賀守”耕雲斎の生き様を一言で表している。
この本を読んで、彼の強い信念と、仲間を守るために命を賭けたその姿に胸を打たれた。
武田耕雲斎は、幕末という混乱の時代において、理想を掲げ、信念に基づいた行動を貫いた人物である。
彼の生き方は、現代に生きる私たちにも多くの教訓を与えてくれる。何より印象的なのは、「信義」を何よりも重んじた姿勢だ。
彼は、権力に屈することなく、自分の仲間や信じる理想のために命を投げ出す覚悟を持っていた。
特にこの本で描かれる「天狗党の乱」の悲劇的な結末は、彼の信念が最後まで揺らぐことがなかったことを鮮烈に伝えている。
耕雲斎は、仲間たちを守るために幕府に降伏するが、その結果、自らと仲間たちが処刑されるという無情な運命を迎える。
しかし、その生き様は、決して敗者ではなく、時代の中で輝く一つの道標のように感じられる。
私たちの日常でも、「信念を持つ」ことは簡単ではない。
困難に直面したとき、妥協や自己保身に走りたくなるのが人間だ。
だが、この本を通じて武田耕雲斎の生き方を知ると、改めて「信念を貫くことの価値」について考えさせられる。
信義を重んじ、人を裏切らない生き方。それは、どんな時代でも変わらない普遍的な美徳だ。
「こうあるべし」と心の奥深くに刻まれる本だ。
現代社会では、信念を曲げることが賢明とされることもある。
しかし、最後に人として何が正しいかを問われたとき、耕雲斎のような生き方を選べるかどうか。
自分自身に問いかけながら、この本を読み進めるのもいい。
私自身、この本を読んで、自分の信念や行動について考えさせられた。
特に仕事や人生で大きな決断を迫られるとき、この本で得た教訓が大きな指針となるだろう。
武田耕雲斎の生き方を知れば、あなたも「何のために生きるのか」という本質的な問いに向き合えるはずだ。
読後、必ず心に残る何かがある。
4. 『YouもMeも宇宙人』 松井孝典 地湧社
生命はどこから来たのか。そして、私たちは宇宙とどうつながっているのか。
この本は、そんな壮大なテーマを科学的なエビデンスをもとに紐解いていく一冊だ。
宇宙や生命に関する話題はどこか難しそうに感じられるが、本書の魅力はその分かりやすさと親しみやすさにある。
読み進めるうちに、自分が「宇宙の一部」なのだという感覚が湧いてきて、知らず知らずのうちに心が踊る。
彗星パンスペルミア説に触れたとき、私は思わず声を上げてしまった。
地球上の生命は、宇宙からもたらされたかもしれないというこの理論は、子供の頃に夢中になったSFの世界そのものだ。
彗星や隕石に含まれる有機物質が地球に降り注ぎ、そこから生命が芽生えたという話は、単なる空想ではなく、現代の科学が真剣に議論している内容である。
そして、その事実が示すのは、私たち人類が宇宙と切り離せない存在であるということだ。
さらに、本書は単なる科学解説で終わらない。
読者に「自分自身」を見つめ直させる力がある。
例えば、アストロバイオロジー(宇宙生物学)の話題に触れると、生命がどれだけ奇跡的な存在であるかを思い知らされる。
自分たちが、たまたまこの地球に、たまたまこの時代に生まれたという偶然の積み重ね。その壮大さに気づかされたとき、日常の些細な悩みがちっぽけに思えてくる。
また、著者が描くのは「宇宙は私たちに何を教えてくれるのか」という視点だ。
たとえば、宇宙のスケールを考えれば、私たちの「当たり前」や「常識」など、ほんの一瞬の存在にすぎない。
それに気づくことで、地球上の問題や、自分の周囲の課題をもっと冷静に、そして大らかに捉えられるようになるのではないかと思わされる。
読んでいて何よりもワクワクするのは、「宇宙の中で自分の存在をどう位置づけるか」というテーマが自然と湧き上がってくるところだ。
単なる物理的な存在ではなく、宇宙の壮大な歴史の一部としての自分——この視点を得たとき、明日を生きるエネルギーがふつふつと湧いてくる。
茂木健一郎氏の推薦文にもあるように、この本はただ宇宙を知るだけでなく、自分自身の見方をも変える力がある。
「宇宙人」という言葉が、読後にはとても身近に感じられるようになるだろう。この本を手に取れば、自分の存在や日常が、壮大な宇宙の一部として輝き出すのを感じられるはずだ。
宇宙や科学に詳しくなくても問題はない。
むしろ、そうした知識がないからこそ、より素直に驚きと感動を味わえるだろう。
生命や宇宙に興味がある人はもちろん、日常に少し疲れてしまった人にも、この本は新たな視点と元気を与えてくれる。
「自分も宇宙の一部」と感じたとき、明日の景色はきっと変わる。ぜひこの本を手に取り、広がる宇宙と自分の可能性を探る旅に、ほんの少しだけでも出てみてはいかがか。
読み終えた私は、夜空を見上げて「私も宇宙人だったんだな」としみじみ思った。
次の瞬間、そばにいた愛犬の紗月を見つめ、「君も立派な宇宙犬だ」と声をかけると、無邪気な表情でしっぽを振る彼女。
——紗月と共に宇宙の壮大さを噛み締めながら、また明日から新しい気持ちで生きていける気がした。
2025年01月19日 00:00